研究概要 |
間質性肺炎症への増殖因子の関与を検討するため、Reverse-transcription polymerase chain reactionによって特発性間質性肺炎(IIP)患者や塵肺患者の気管支肺胞細胞中の増殖因子mRNA発現を検討し、その結果、IIP、珪肺、石綿肺を問わずTGF-βmRNAの発現増加を認めたことをすでに報告してきた。今年度は、間質性肺炎の発病学との関連をin vivoで解明するため、増殖因子、サイトカイン遺伝子を経気道的にラット肺へin vivo遺伝子導入を行い、その病理学的変化を検討した。膜融合型iposome(HVJ-liposome)法によるヒトTGF-β遺伝子導入では、胞融の線維芽細胞の増殖、コラーゲンの沈着が光顕、電顕、免疫組織学的検討で証明された。同様にPDGF-B遺伝子導入肺では、TGF-β導入肺に比較し炎症細胞浸潤が著明であったが、線維芽細胞増生は著しくなかった。非増殖型アデノウイルスベクターによるIL-6およびその受容体(IL-6R)遺伝子導入では、対照ベクターやIL-6,IL-6Rの単独導入では病理学的変化は惹起されなかったが、IL-6,IL-6R共に導入した肺では著明なリンパ球の浸潤を伴う胞融炎がみられ、肺胞腔内には多数のマクロファージの浸出が認められた。一方好中球や好酸球の浸潤はあまり認められず、線維芽細胞の増殖や膠原線維の沈着は認めなかった。 以上の結果は導入遺伝子に依存して組織学的に異なる間質性肺炎像が惹起された。TGF-βあるいはPDGF-Bは著しい炎症細胞浸潤なしに膠原線維沈着を誘導した。対照的にIL-6は胞融炎を惹起したが、膠原線維の沈着を誘導しなかった。以上の結果は間質性肺炎の組織型によって異なるサイトカインがその発症に関与することを示唆した。
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