研究概要 |
安定期の気管支喘息患者と、気道過敏性亢進がみられた被検者にメサコリン吸入をおこない、低酸素血症を生じた19例を対象とした。低酸素血症の原因を明らかにする目的で、吸入前後に酸素飽和度(SpO_2),分時換気量(V_E)、呼気終末炭酸ガス分圧(P_<ET>CO_2),ガス交換率(R)を経時的に測定し、コンピュータにとりこんだ。低酸素血症時、19例中14例でRの低下を認め、この群では吸入前と吸入直後で、SpO_2は97±1(平均±ISD)から96±4%となり、V_Eは8.6±1.2から13.4±2.6l/min(p<0.01),P_<ET>CO_2は38.5±2.3から29.1±4.4Torr(P<0.01)と過換気を呈し、Rは0.86±0.04から0.98±0.19に増加(p<0.05)し,その後SpO_2は89±2.4%と低下し(p<0.01),V_Eは9.7±3.8l/min(p<0.01),P_<ET>CO_2は34.9±5.3Torr(p<0.01)と過換気は改善し,同時にRは0.67±0.05と低下した(p<0.01)。これら、R低下を伴う、低酸素血症は過換気で減少したCO_2のbody storeを回復する際に見られる、低酸素血症の機序が働いているものと考えられた。R低下を伴う低酸素血症と認めた7例について、あらかじめメサコリン吸入中と吸入後に2%CO_2を換気させた際には、低酸素血症と認めなかった。以上より、気管支喘息発作寛解後の低酸素血症にはpost-hyperventilation hypoxemiaの機序が働いているものと考えられ、CO_2補充吸入療法などの可能性があり、今後検討したい。
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