研究概要 |
ヒトマクロファージ細胞株であるTHP-1細胞をマイトマイシン処理のHTLV-I感染リンパ球(MT-2細胞)と混合培養し,HTLV-IをTHP-1細胞に感染させた。感染初期においては、ウイルスメッセージの推移から、自己拘束性の溶解感染である可能性が示唆された。感染2カ月後、ウイルスメッセージは消失したが、ウイルスゲノムのシグナルは保たれており、感染細胞の割合は1,000個に1個であった。その後、それ以上の感染の拡大は認められなかったので、限界希釈法により感染細胞のクローニングを行い、最終的に4つのクローンが得られた。この4つのクローンは制限酵素による消化パターンが全く同じであり、同一起源の細胞と推定された。またPstI消化によって検出されるはずのenv領域2.4Kbのフラグメントが検出できなかったが、これは3'末端のPstI部位の点変異であることが分かった。また少なくとも未刺激の状態では、このクローンはウイルスメッセージの発現もウイルス蛋白の発現が認められなかった。さらにこの感染THP-1細胞において、サイトカインの動向を検討したところ、LPSによって細胞を刺激することにより、IL-6のメッセージ発現および分泌が亢進した。この事象はHAMの病因を考える意味で興味深い。しかしHTLV-I pxのメッセージが全く動いていない等、まだ問題点が残っており、今後さらに詳細な検討が求められる。
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