研究概要 |
(1)各種神経筋疾患生検筋におけるSODの分布:ミトコンドリア脳筋症生検筋(MELAS 3例,CPEO 4例)にて抗Mn-SOD,Cu/Zn-SOD抗体を用いて免疫組織化学的に検索した.ミトコンドリア脳筋症ではMn-SOD強陽性線維が散在性に存在し,抗Cu/Zn-SOD抗体ではMn-SOD強陽性線維に一致して軽微な染色性を有するのみであった.多発筋炎ではMn-SOD,Cu/Zn-SODともに軽微に染色される線維が散在した.筋ジストロフィー症,軽微変化例では,Mn-SOD,Cu/Zn-SODともにほとんど染色されなかった.ミトコンドリア脳筋症のMn-SOD強陽性線維の分布は,ragged-red fiberにほぼ一致しており,cytochromec oxidase染色との関連では欠損線維,陽性線維どちらにも分布していた.以上より,ミトコンドリア脳筋症のMn-SOD強陽性線維は,ミトコンドリアの多い筋線維にMn-SODが染色される.しかし,ミトコンドリアが多い細胞では酸素消費量も多く,superoxideを生じやすいところと考えられ,その処理によりMn-SODが多量に誘導され,細胞障害を保護している可能性もある. (2)各種筋疾患での生検筋の過酸化脂質の検討:生検筋のthiobarbituric acid-reactive substance(TBA-RS)はミトコンドリア脳筋症(3例)21.9nmol/g wet tissue,多発筋炎・皮膚筋炎(9例)25.2,筋緊張性ジストロフィー(4例)28.2,横紋筋融解症回復後(2例)21.1,正常対照例(9例)24.8と各疾患群とも明らかな差はなく,生検筋で筋崩壊と活性酸素の関連はこの方法ではあきらかにできなかった. (3)神経疾患剖検脳における過酸化脂質量の測定では,まずコントロールとして正常例において凍結脳における各皮質(前,後,側,頭頂葉)のホモジュネートにおけるTBA-RS量を分光法を用いて測定した。その結果,各皮質とも0.15-0.40nmol/脳mgで後時間やホモジュネートの条件などによりバラツキが多く,今後症例数をふやして検討する.
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