研究概要 |
1.研究の概要,実施方法及び経過等: タイラー脳脊髄炎ウイルス(TMEV)はマウスに自己免疫性脱髄疾患を起しMSの動物実験モデルとされる。共同研究者であるノースウエスタン大学医学部免疫学教室のB.S.Kim教授より供与されたTMEVを感受性マウスの脳内に接種することによりTMEVによる脳脊髄炎を発症させた。またTMEVの外殻タンパクをコードするcDNAをλgt11ファージシステムに挿入しヒュウジョンタンパクを作製し,感染マウス血清中の抗体と反応させることにより,抗体が認識する外殻タンパク中のエピトープを決定した。このエピトープに相当するアミノ酸配列をもつ合成ペプチドを作成し,感受性マウスと抵抗性マウスとで認識するエピトープの違いについて検討した。さらにこれらのエピトープを感受性マウスに感作することにより誘導される脳脊髄炎の症状がどのように変化するかについて検討した。 2.研究成果の概要 λgt11ファージシステムにより外殻タンパク(VP)のほぼ全域をカバーするヒュージョンタンパク群を得た。 TMEV感染マウスの構造非依存性抗体が認識するエピトープはVP1にて3ヶ所,VP2にて2ヶ所,VP3にて1ヶ所の計6つの領域に限られた。 この部位はVP1:13-27,VP1:145-167,VP:251-276,VP2:2-16,VP2:165-179,VP3:24-43からなる部位であり、それぞれA-1A,A-1B,A-1C,A-2A,A-2B,A-3Aと名付けた。 TMEVを感染,発症したSJL/JマウスはA-1Cを非常に強く認識した,これに対し抵抗性のC57BL/6及びBALB/cマウスはすべてのエピトープを認識し,感受性マウスと抵抗性マウスとのあいだに著しい相違がみられた。 In vitroウイルス中和アッセイでは抗A-1C抗体はウイルスブラックの出現を著しく抑制した。 これらのペプタイドをあらかじめ感作してからウイルスを感染させると,あらかじめA-1Cを感作した場合は,発症が著しく抑制された。 4研究成果の今後の活用等 1:TMEVによる自己免疫性脳脊髄炎発症動物の抗体が認識するB細胞エピトープが決定した。 2:今後この方法を活用して脱髄起炎性T細胞エピトープの解明をおこなっていく。
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