研究概要 |
アポリポ蛋白E4(アポE4)とアルツハイマー病(AD)との関連を明らかにするために、アポリポ蛋白E(アポE)表現型E2,E3,E4の分布と,それらから計算される対立遺伝子ε2,ε3,ε4の出現頻度を,日本人の健常者群と痴呆患者群との間で比較検討した。健常者群は三重県北中部存在の成人692名(平均年齢51.4±12.6歳)であった。痴呆患者群は75名(平均年齢72.9±9.2歳)で、60歳未満発症の早発性AD(EOAD)13名(平均年齢62.2±6.6歳)、60歳以上発症の遅発性AD(LOAD)30名(平均年齢76.2±6.9歳)、血管性痴呆(VD)32名(平均年齢74.1±8.9歳)の各群に分けられた。アポE表現型の決定は等電点電気泳動とimmunoblottingにより行い、統計学的検討はx^2検定を用いた。 健常者群ではアポE表現型の分布には性差・年齢差はなく、対立遺伝子ε2,ε3,ε4の出現頻度はそれぞれ0.05,0.85,0.10であった。老年健常対照群(60歳以上の健常者)との比較してアポE表現型の分布はLOADで有意な差(p<0.0001)を認めたが、EOAD,VDでは統計学的有意差はなかった。ε3の頻度はEOAD0.77,LOAD0.60,VD0.84で、ε4の頻度はEOAD0.19,LOAD0.38,VD0.13であった。正常群との比較でLOADではε3は有意に低く(P<0.0001)、ε4は有意に高かった(P<0.0001)。本研究の結果は従来報告されている外国および本邦での結果と一致し、アポE4はLOADで出現頻度が高く、発症における危険因子の一つであると考えられる。
|