研究概要 |
今回の研究計画の一環として下記の実験を行った.レボドパを大量に急性投与すると,黒質緻密部ドーパミンニューロン(以下SNC DA)の発射頻度は短時間ながら著減する.この現象はSNC DAに存在するautoreceptorを介した負のフィードバック機構が機能していることによる.しかし,レボドパ慢性投与がSNC DAに与える影響について電気生理学的に検討した報告はない.今回我々はSNC DAの発射頻度と終末膜興奮性を測定することにより,レボドパ慢性投与時のSNC DA機能を評価した. 対象は体重は340〜500gの雄性SDラットで,レボドパ投与群(L-dopa 100mg/kgとcarvidopa 25mg/kgを60日連続腹腔内投与したものn=19)とコントロール群(n=27)の2群.方法はラット中脳黒質に挿入したガラス微小電極でSNC DA活動を細胞外記録し,発射頻度を測定した.さらにSNC DA活動の記録時,同側の尾状核に挿入したスチール電極から電気刺激し,逆行性電位を記録した.これより終末膜興奮性(逆行性電位が100%出現する刺激強度)を測定した。結果はレボドパ終末膜興奮性は,コントロール群に比し下降傾向をしめした.一方,SNC DAの発射頻度は両群で差はないようであった. 本実験の知見としては,レボドパ慢性投与群では急性投与時と同様に終末膜興奮性は下降傾向であったが発射頻度は正常に保たれていた.この終末興奮性の低下は線条体での外因性ドーパミンの放出障害と関連している可能性が考えられた.この所見は,レボドパ慢性投与に伴い,レボドパの薬効が減弱することと関連があると思われた.
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