研究概要 |
MnSODはミトコンドリアに限局して存在し、ミトコンドリア ストレス下で生じるfree radicalを消去するが、それと同時にこの酵素は新たなfree radicalの発生を招く。MnSODの持つこのような特質はこの酵素のin vivoでの生理学的役割を定義する事を難しくしている。我々はこの問題に対処するために,本蛋白のミトコンドリア輸送に関わるsignal peptideをコードするgenomic fragmentをクローニングし,その全塩基配列を決定した。そしてこの部分にミトコンドリア輸送に重要なamphiphilic(両親媒性)alpha-helix構造の形成を完全に阻害するmissense変異を見出し,それがco-dominantに遺伝する多型性変異であることを明らかにした。これはMnSODのミトコンドリア輸送のefficiency levelつまりミトコンドリアのoxidative stressに対するtoleranceにhereditary variationが存在する事を示唆する。そこで蛍光プライマーによるPCR-SSCP解析により,この多型の遺伝子頻度とパーキンソン病との間の関連分析を行ったところ,amphiphilic alpha-helix構造を保持する変異がパーキンソン病群において有意に多く、特に家族歴を有するパーキンソン病群において多かった。これはMnSODのミトコンドリアへの輸送率が高い事がパーキンソン病発症のriskを高める可能性を示唆しており,またもう一つの可能性として,まだ未知のパーキンソン病発症関連遺伝子が本遺伝子とその近傍に密に連鎖して存在する可能性を示唆している。我々はすでにこのマーカーを使いさらに多くのサンプルでの関連分析とともその家族性パーキンソン病におる家系連鎖分析を開始している。いずれにしても今回同定したミトコンドリア輸送に関わるsignal配列の変異は,神経変性を含む様々な状況下でその真の役割が問題となっているMnSODの病理学的および生理学的意義を評価する上で,今後極めて有用な情報を与えてくれる事が期待される。
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