研究概要 |
体重300gの雄性Sprague-Dawleyラットに,週3回(月,水,金),1日6時間500ppmの酸化エチレン曝露を5週間行い,実験群(n=20)とした。室内空気に曝露させた同様のラットを対照群(n=12)とした。 曝露完了後の水迷路検査において,水中のポール上の不安定さ,ポールから水中に落ちて泳ぎ始める頻度は実験例で対照群より高頻度であった。水迷路検査では,到着点に達するに必要な時間は実験群では対照群より長かったが,その差は統計学的に有意でなかった。3回の検査を同一日に繰り返し行った結果,到着点に達するに必要な時間は,両群とも繰り返しにより短縮した。各回毎の比較でも両群間に到着点に達するに必要な時間の有意差は認められなかった。到着点を変更することによって,実験群では対照群より第1,2回目の検査で到着点に達するまでに有意に長時間を要した。しかし,第3回目の検査では両群間で到着点に達するまでの時間に有意差が認められなくなった。曝露終了1週間後,動物実験用4.7テスラ横置き型超伝導MR装置(SIS 200/400)による検査において,T2強調画像では多数の割面のいずれにおいても脳浮腫は検出されなかった。また拡散係数については,尾状核-被殻,大脳皮質のいずれにおいても両群間で近似した値が得られた。上部頸髄の拡散係数の解析は呼吸性アーチファクトのために不可能であった。尾状核-被殻,大脳皮質には光学および電子顕微鏡的観察により明らかな差は認められなかった。頸髄上部の後索には髄球が低頻度で認められた。以上の結果より,酸化エチレンの慢性曝露によって,行動異常は惹起されるが,大脳レベルには高磁場核磁気共鳴法では明らかな異常は認められないと結論した。行動異常と脊髄後索病変との関連が推定される。
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