研究概要 |
冠微小血管障害患者の1.心筋虚血検出法,2.冠循環動態特性,3.アデノシン動態,4.血管内皮由来弛緩能,5.脂質代謝,6.虚血発生機序からみた薬物治療の効果について検討した。冠微小血管障害患者では1.頻回心房ペーシング負荷時に5%以上の心筋酵素摂取率低下がみられ,fiberoptickカテーテル法によりヒト冠微小血管障害の心筋虚血検出が可能と考えられた。2.心筋酸素需要増大時に左室心尖部を中心とする領域に局所壁収縮能の低下が観察され,また,ジピリダモ-ル負荷の虚血誘発時にsonicated albuminを用いた心筋コントラストエコー像(心断層超音波法、血管内超音波カテーテル法)でまだらなコントラストエコー像が観察された。虚血発生機序としてのcoronay steal現像を支持する所見と考えられた。3.心筋虚血発生時の動脈血および冠静脈血中のアデノシン濃度は対照群と有意差がなかった。冠微小血管障害患者でアデノシン濃度が特異的に高いとの所見はなかった。4.冠導管血管の内皮由来弛緩能は対照群と有意差なかったが、冠微小血管の内皮由来弛緩能は有意に低下していた。5.総コレステロール(T-chol), HDL-chol, LDL-cholは対照群と有意差はなかった。しかし、血液中の酸化LDLが有意に高値であった。6.アミノフィリンならびにACE阻害剤により運動負荷時の心電図ST低下が軽減された。とくにACE阻害剤の長期(3か月)投与により心電図変化のみならず愁訴も軽減する方向にあった。以上から、狭心痛や心電図ST低下所見を示すが正常冠動脈像の患者では血液中の酸化LDL増大が原因となってprearteriolar vesselを中心とする冠微小血管に内皮機能障害が発生し、労作などの冠血流増加時にcoronary steal現象が発生しやすいと推察される。血管内皮賦活作用を有するACE阻害剤は冠微小血管障害の治療に有用であることが確認された。
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