研究概要 |
1.目的 chemical shift imaging(CSI)による心筋内高エネルギーリン酸定量について検討した.2.方法 1.5T装置で,表面コイル(送信8インチ,受信5インチ径)を用い,一次元(sagittal方向のスライス選択パルスで左室部分を選択しcoronal方向に16の位相エンコード)および三次元(一方向にスライス選択,他の二方向に16の位相エンコード)のリンCSIを行った.3.一次元CSIの結果 運動負荷タリウム-201心筋シンチグラフィーで左室前壁に再分布がある狭心症群(n=29),再分布のない梗塞群(n=12)および健常対照群(n=11)についてみると,左室前壁phosphocreatine含量は対照群12.14±4.25[SD]>狭心症群7.64±3.00>梗塞群3.94±2.21μmol/g湿重量で三群間に有意差(p<0.05)を認めた.ATP含量は対照群7.72±2.97,狭心症群6.35±3.17,梗塞群4.35±1.52で対照群と梗塞群の間に有意差(p<0.05)を認めた.4.三次元CSIの結果axial方向にスライス選択し他の二方向に位相エンコードする方法を既知濃度の無機リン酸溶液を満たしたファントムについて実施した.標準物質は表面コイルの中央におき,縦緩和による飽和因子を算出して信号強度を補正し,リン酸溶液の濃度を算出したところ実際の濃度に極めて近い値が得られた.coronal方向にスライス選択し他の二方向に位相エンコードする方法では標準物質を表面コイルの感度領域内に置くことが困難であった.いずれもヒトで行う場合1voxel内の心筋重量測定に困難を認めた.三次元CSIは信号の由来部位と各部位での化学シフトの違いを示すのに有用であった.5.結語 心筋内リン化合物定量には,現段階では三次元CSIより一次元CSIの方が適していると考えられる.スライス選択を加えた一次元CSIで求めた心筋内ATP含量が虚血性心疾患における心筋viabilityの指標になる可能性がある.
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