研究概要 |
(目的)傷害後内膜肥厚(IH)内でのNOの作用を明らかにし,また、NOの基質であるL-arginineと,bradykininの分解を抑制しNOの合成を刺激するとされるACE阻害薬との同時投与につき検討した。さらにその機序としてのIH内での誘導型NO合成酵素の発現についても検討を加えた。(方法)SDratの左頚動脈の内膜を2FのFogartyカテーテルで剥離し、その直前にAltzetポンプを用いて頚静脈より、以下の6群に分け、それぞれ薬剤を2週間投与した。A群,L-arginine;B群,D-arginine;C群,生理食塩水;D群,NO合成の抑制剤であるL-NAME;E群,剥離6日前よりEnalaprilを飲水中に溶解し投与開始し、剥離後2週まで持続投与;F群,A群とE群の処置を同時に加えた群。これらを、剥離後2週間後に灌流固定後、血管横断面標本を作成し、その内膜と中膜の面積比(I/M)を求めた。また、iNOSの抗体を用い、免疫組織染色を施行。そのカラー顕微鏡写真において、IHでのiNOS陽性細胞の光学濃度をコンピューター画像解析ソフトにて分析し、iNOSの発現の強さを各群で比較した。(結果)I/MはA群でC群より小で、B,D群ではC群と差はなかった。これより、L-NAMEで内因性NOを抑制しても内膜肥厚には影響しないが,NOの基質であるL-aginineを投与するとそれを抑制する事がわかった。またI/MはA,E群でC群より小で、F群はA,E群より小であった。これよりL-arginineおよびEnalaprilの単剤投与より併用投与はさらに1Hを抑制する事がわかった。一方、iNOS陽性細胞の光学濃度は、E,F群でC群より有意に大であった。これより、EnalaprilはIH内でiNOSの発現を上げる事が示唆された。(結論)L-arginineは、新生内膜内でiNOSの発現を上げるEnalaprilとの併用により、単独投与よりも、傷害後内膜肥厚をさらに抑制する。
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