研究概要 |
1994年度において当該テーマに交付された科研費により,心筋梗塞患者において運動負荷TI-201心筋シンチグラフィ(Single Photon Emission Computed Tomography : SPECT)24時間逆再分布領域における糖代謝をF-18 FDCを用いたPositron Emission Tomography(PET)によって評価し,24時間逆再分布の意義をJ Nucl Medに報告した。T1-201心筋SPECT 24時間後像はタリウムの平衡分布像である。T1イオンの細胞膜Na-K ATPaseに対する親和性がKイオンのそれと同等あるいはそれ以上であることから,心筋におけるT1イオンの分布はKイオンの分布に相当し,従ってタリウム平衡分布像であるT1-201心筋SPECT 24時間後像はviableな心筋量を反映する画像であると思われる。T1-201心筋SPECT運動負荷後像でT1の集積の低下がほとんど見られず,かつ24時間後像で集積低下すなわち24時間後逆再分布が認められる領域,心筋血流は維持されているが心筋viabilityの低下した領域であると考え得る。同領域における糖代謝異常をFDG PETを用いて証明し,心筋梗塞患者におけるT1-201心筋SPECT 24時間逆再分布の意義を明らかにした。1995年度は同じく心筋梗塞患者を対象に,C-11 acetateをトレーサーとするPETを行い,T1-201心筋SPECT 24時間逆再分布領域における心筋酸素代謝を定量的に検討した。心筋におけるC-11 acetate活性の減衰を指数関数で近似し,減衰の速さの定量値(酸素代謝の活性に相当)K monoを計算した。K mono値は,T1-201心筋SPECT 24時間像正常領域では0.0634,固定性欠損領域0.0387,24時間逆再分布領域では0.0452であった。この結果よりT1-201心筋SPECT 24時間逆再分布領域においては糖代謝のみならず,酸素代謝も障害されていることが明らかとなり,T1-201心筋SPECT運動負荷後像でT1の集積低下がほとんど見られない領域,すなわち血流の維持されている領域における心筋障害をT1-201心筋SPECT 24時間後像を撮像することにより評価し得ることが,さらに明らかとなった。T1-201心筋SPECTの初期像が心筋血流を表していることはすでに確立されているが,これら一連の検討によりT1-201心筋SPECT 24時間後像が代謝イメージと同等の情報を含むというT1-201心筋シンチグラフィの新しい可能性を示唆する結果を得た。
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