研究概要 |
Protein kinase C(PKC)による心臓自動能の調節機構を検討するため、ウサギ洞結節及び房室結節からペースメーカー細胞を単離,パッチクランプ法を用いて活動電位と膜イオン電流を記録、実験を行った.先ずPKCを強く活性化することが知られているangiotensin IIとPKCの活性剤であるphorbol ester(TPA)のペースメーカー細胞への影響を検討した.Angiotensin II(AII)は用量依存性にペースメーカー細胞のCa電流I_<Ca>を抑制した.しかしながら100nM以上の高濃度では最初の抑制に引き続き,徐々の増加が観察された.A-IIによるI_<Ca>抑制機序を細胞内潅流法等により検討したところ、A-IIは細胞内cAMP濃度を低下させることによリ作用を発現することが判った.これは内因性のcAMP濃度の高いペースメーカー細胞に特有の現象で,その作用経路はアセチルコリンのそれと重複していた.一方TPAは潅流開始後10-20分の緩やかな経過でI_<Ca>を5-10%増加させた.この増加はPKC活性の無い4α phorbolではみられず,PKCによる反応と考えられた.A-II高濃度で観察された脱感作の一部をPKCがもたらしている可能性が考えられた.アセチルコリンもまたPKCを活性化することが知られている.後半の研究ではアセチルコリンによる房室結節I_<Ca>の調節機構について検討した.アセチルコリンによるI_<Ca>の抑制AIIの約2倍強かったがこの抑制もcAMPを介したものであった.一方細胞内cAMPが固定された条件下ではアセチルコリンはI_<Ca>をやはり5%程度増加させた.以上より,PKCはペースメーカー細胞に対し促進的に働くが,その程度は弱く,生理活性物質がcAMP系に影響を与えた場合その役割は僅かなものであると示唆された.
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