研究概要 |
研究成果の概要 平成6年〜8年の3年間,文部省より科学研究費補助金(一般研究C)を受け,以下のような新知見を発表した。 1.ラット胸部大動脈輪状標本を用いた生理学的手法、および、ラット培養血管平滑筋細胞を用いた生化学的手法にて各種炎症性サイトカインの作用を検討し、血管収縮反応の抑制に、IL-lβにおいては一酸化窒素(NO)-cGMPが、IL-6ではprostacyclin-cAMP系がそれぞれ関与することを明らかにした。また、IL-1βにおけるNO-cGMPの産生を誘導型NO合成酵素(iNOS)mRNAの発現のレベルで検討し、チロシンキナーゼが深く関わっていることを明らかにした。一方、IL-2およびIL-8は、共に影響を与えなかった。 2.ラット培養心筋細胞および線維芽細胞におけるNO-cGMPの産生とiNOS mRNAおよびその蛋白の発現に対する各種サイトカイン(IL-1β,IL-2,IL-6,IL-8,TNF-α,TGF-β)の作用、さらに心筋細胞の収縮能をoptical-videoシステムにより検討し,IL-1βは心筋細胞におけるiNOS mRNAの発現を介してその収縮能に影響し、一方、線維芽細胞においてはその作用は認められなかった。 3.IL-lβのNO産生におけるエイコサノイド代謝系、特に、リポキシゲナーゼ代謝系の関与についてラット培養血管平滑筋細胞を用いてiNOS mRNAの発現のレベルで検討しところ、IL-lβはNOおよびエイコサノイド両代謝系を亢進し、さらに5-リポキシゲナーゼ代謝産物であるLTD4が平滑筋細胞からのIL-lβによるNO産生をiNOS遺伝子の転写以降のレベルで修飾することを明らかにした。 今後の研究課題として,サイトカインが受容体に結合後の細胞内シグナル伝達経路の解明と血管系細胞に対するサイトカインの生物学的作用が実際の臨床でどのような意義を持つかなどを明らかにしていく予定である。
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