研究概要 |
心筋細胞内での炎症性サイトカインによる遺伝子発現調節,即ち局所急性期反応の病態生理学的意義を明らかとするためアンギオテンシノーゲンならびにヘモペキシン遺伝子の発現動態を検討した. 1.アンギオテンシノーゲンならびに組織レニン・アンギオテンシン系の解析 慢性心筋傷害によるサイトカインの関与を明らかとするため,アドリアマイシン心筋症ラットを作製した.アンギオテンシノーゲンは肝細胞では炎症性サイトカインにより発現調節を受ける急性期反応蛋白質であるが,アドリアマイシン心筋症ラットではアンギオテンシノーゲン発現の減少,レニン発現の増加が認められた.本モデルは組織像とも対比したがアドリアマイシン毒性による組織傷害が著明であるにも関わらず,免疫細胞が乏しくサイトカインの関与の少ないモデルであることが示唆された.さらに本モデルは心不全としての血行動態による影響が大きいものと考えられた. 2.ヘモペキシン遺伝子の発現調節 心筋初代培養細胞ではヘモペキシン遺伝子はサイトカインによりmRNA発現が約4倍に増加するのに対し,直接的な細胞傷害性物質であるヘム,アルコールには応答しなかった.一方,慢性心筋障害モデルとして作製したアドリアマイシン心筋症ラットではヘモペキシン遺伝子発現に変化は認められなかった.次に,この遺伝子発現誘導が肝細胞と同様の機序,即ちInterleukin-6応答領域を介した転写調節かを検討するため,ヘモペキシン遺伝子のプロモーター領域を用いてCATアッセイを行った.心筋細胞内でのプロモーター活性は認められたが,内因性のInterleukin-6を誘導すると報告されている低酸素刺激では転写促進が認められず,外因性のInterleukin-6の関与が必要であることが示唆された.
|