研究概要 |
1、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)はα、β二つのサブユニットよりなる複合酵素で、αβいずれかの障害により発症する。我々はすでに8例のβ鎖欠損患者の遺伝子変異を報告したが、今回7例のα鎖欠損線維芽細胞(no. 91, 168, 295, 330, 344, 409, 419)を用いその遺伝子変異を解析した。患者細胞よりpoly (A^+) RNAを抽出しRT-PCR法を用いcDNAを増幅し塩基配列を決定したところ、91で111bpの欠失が、330で84bpの挿入が、409に103bpの欠失が認められた。これらの変異はいずれもミススプライシングが原因として考えられ現在ゲノムDNAレベルでの解析を進めている。 2、次に大腸菌を用いたPCCの発現系を開発し、日本人で頻度の高いC1283T変異がPCC活性の低下をもたらすということを証明した。α、β各々の成熟酵素をコードする。αPCCcDNA、βPCCcDNAは一つの発現ベクターに挿入した(pPCCAB)。大腸菌のシャペロニンであるGroESとGroELの発現プラスミド(pGroESL)はGoloubinoffらの方法で作成した。発現ベクターpPCCAB、PGroESLは大腸菌(DH5aF'IQcell)にエレクトロポレーション法を用いてトランスフェクトした。大腸菌野性株及びpGroESL、pPCCABを各々単独で発現させた場合はPCC活性ほとんど認められなかったが、両プラスミドを同時にトランスフェクトした場合は正常肝のPCCと同等の活性がえられた。すなわち大腸菌でのPCC活性の発現にはシャペロニンの同時発現は必須であることが明らかになった。また、日本人β鎖欠損症で頻度の高いC1283T変異をもつβPCCcDNAを用いた場合、PCC活性は回復せず原因変異であることが確認された。今後この大腸菌発現系を用いて遺伝子治療にも応用可能な発現ベクターを開発する予定である。
|