研究概要 |
I-Cell病は常染色体劣性遺伝する糖タンパク質の代謝異常症であり,原因はゴルジ体の中でリソソーム酵素の糖鎖のマンノース残基にリン酸を付加する酵素,N-アセチルグルコサミン-1ーリン酸転移酵素の欠損が原因である.この酵素の精製は非常に困難であるため,酵素学的な性質が充分に解明されておらず,遺伝子もクローニングされていない.この遺伝病のcDNAをクローニングするために遺伝子導入による活性の発現を指標とした方法を試みた. まずI-Cell病の患者由来の培養繊維芽細胞のChen-Okayamaの高効率トランスフェクションを用いてヒト肝pcD2 cDNAライブラリーを導入した.トランスフォーマントはneo耐性になるためG418を用いて選択した結果,約1万個のneo耐性トランスフォーマントが得られた.次にN-ピレン-ドデカノイルスフィンゴミエリンをアポプロテインイAと混合してリポソーム化したものを培地に加えて,細胞内に取り込ませる.その後,トリプシン処理をして生理的食塩水に懸濁し、366nmの紫外線を照射してから培地を加え,さらに培養を続けた.この方法でN-アセチルグルコサミン-1ーリン酸転移酵素を発現している細胞のみがピレンを分解することができて生存可能である.この選択により5個のトランスフォーマントが選択された.現在,これらのトランスフォーマントの細胞内,及び培地のリソソーム酵素活性の測定による細胞生物学的性質の検討をしている.さらに導入された遺伝子を回収し,その構造を解析している.
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