研究概要 |
ヒトパルボウイルスB19(B19)感染例の症状は無症状から骨髄不全までの広いスペクトラムを示す。B19感染流行のウイルス要因と病態特異性を明らかにするために、1978年から1992年までの当科入院患児の保存血清からB19DNA陽性例をスクリーニングした。ドットブロットハイブリダイゼーション法により11例、PCR法により50例の陽性例を発見した。B19DNAgenome型は、5種の制限酵素PstI,KpnI,HpaI,PvuII,XbaIによる切断パターンからI、II、III、IV型に分類されている。得られた陽性例の分析可能な30例についてこの分類に従って分類を試み、流行および病態とgenome型との関連について検討した。 伝染性紅斑の流行年に一致して陽性例がみられ、1981年から1982年がIV型、1986年から1987年はII型、1989年から1990年はI型とII型の混在、1991年から1992年はI型で、流行年毎に異なりその移行期には一部重複がみられた。病態との関連については、無症状の5例ではI型4例、II型1例であった。上気道感染ないし伝染性紅斑の症状の7例ではI型4例、II型2例およびII型とIV型の中間型I例であった。貧血、汎血球減少などから骨髄不全までの造血抑制を呈した17例ではI型3例、II型8例、II型とIV型の中間型1例およびIV型5例であった。意識障害を呈した1例はI型であった。これらの結果からは無症状から骨髄不全あるいは意識障害などの多彩な病態とウイルスgenome型との関連を見出すことは困難であった。問題解決には今回PCR法で増幅した以外の領域の解析が必要になろう。
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