研究概要 |
【目的】ウイルスをマウスに繰り返し静注して得たヒトIgA腎症類似の腎病変において、in situ hybridization法(ISH法)を用いて糸球体内のウイルスRNAの局在を検討した。 【実験1】 (方法)4週齢、雌のSwiss Albinoマウスに、10^7TCD_<50>/0.1mlのCoxsackie B_4ウイルス(Cox.B_4)0.3mlを尾静脈より1カ月に1回ずつ、5カ月齢まで接種し、6カ月齢より12カ月齢まで1カ月毎に腎を採取した。ISH法はジゴキシゲニン標識オリゴヌクレオチドプローブを用いて行った。 (結果)光顕では6カ月齢より糸球体にメサンギウム増殖及びPAS陽性沈着物を認め、9カ月齢より増殖性変化は次第に改善し、11,12カ月になると沈着物も目立たなくなった。蛍光ではIgG,IgAとも6カ月齢よりメサンギウム領域に認められ、10カ月以降はIgAが優位であった。ISH法のシグナルは6カ月齢よりメサンギウムに認められ、10カ月齢で最大となり、その後時間とともに減弱した。 【実験2】 (方法)Coxsackie B1,B2,B3,B4,B5 virusの順に1から5カ月齢まで毎月マウスにウイルス液0.3mlを静注し、同様の実験を行った。ISH法はエンテロ系ウイルスを検出可能なオリゴヌクレオチドcDNAプローブを合成したものを用いた。 (結果)光顕では6から7カ月齢をピークとしてメサンギウム細胞の増殖とメサンギウム領域にPAS陽性の沈着物を認めた。蛍光ではIgG,IgAとも6から8カ月齢において有意にメサンギウム領域への沈着を認めた。ISH法ではエンテロ系ウイルスのシグナルは6から8カ月齢までメサンギウム領域に強く認めたが、以後シグナルは減弱していた。 【結論】Cox.B_4の頻回接種または数種類のエンテロ系ウイルス投与によっても、ヒトの増殖性腎炎類似の病変が得られ、この病変上にウイルスRNAが検出されたことから、腎組織障害がウイルスの関与した免疫複合体により引き起こされていることが示唆された。
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