研究概要 |
大動脈峡部の胎生期の発達に及ぼす血流量の影響を次の如く研究した。 私達の従来の研究により妊娠満期のラットにインドメサシンを投与すると胎仔の動脈管が収縮し,右室-肺動脈-動脈管-下行大動脈の血流が低下し,代償性に左室-上行大動脈-大動脈峡部の血流が増加する事が判明している(Momma et al:Circulation Research 64:1137,1989).また従来私達の用いている全身急速凍結法では胎生期の大動脈の内径を正確に測定できることが判明している。そこで次の如く実験を行った。 インドメサシン10mg/kgを妊娠21日のラット5頭に胃内注入し,24時間後に胎仔を帝王切開で取り出し,直ちに-80度Cのドライアイス・アセトンに投入して固定した。インドメサシンを投与しないラット2頭の胎仔を対照群とした。大動脈峡部の内径は峡部と直角方向の断面を切り,その断面を実体顕微鏡でカラー写真に撮影して測定した。 その結果はインドメサシンにより動脈管内径が強く収縮し,対照の12%になった。大動脈峡部への血流増加に反応して,大動脈峡部の断面積は拡張し,対照の146%になった。従ってこの実験の結果から,胎生期の大動脈峡部は血流の増加に対して拡張して反応することが確かになった。これは実験により大動脈峡部の大きさと血流との関係を解明した最初の研究である。この研究はIn situ morphology of fetal aortic isthmus following ductal constriction in ratsとしてFetal Diagnosis and Therapy 1994;9:53-61に発表された。
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