研究概要 |
本研究の目的は自閉症の程度の段階付け評価を行うことである. 1.自閉性障害のチェックリストの作成 自閉症の診断基準であるDSM-III-Rに具体的な症状を多数設定したチェックリストを作成した. 2.対象は82名で,年齢は1歳10ヵ月から18歳4ヵ月までで(平均5歳7ヵ月),男児65名,女児17名である. 3.結果 1)精神発達の評価 精神発達は正常9名,境界9名,精神遅滞64名である.2)チェックリストでの陽性カテゴリー数で自閉性を段階付けすると,なし〜境界4名,軽度12名,中等度24名,高度42名であつた.診察ならびにチェックリストによる自閉性障害の程度はよく相関していた(p=0.0079,x^2の検定).3)チェックリストによる方法に比較して,診察による自閉性の診断では,精神遅滞が中-重度では自閉性の程度をより重度に判断していた(P=0.0039,x^2検定).4)自閉性障害の程度と精神遅滞ならびに運動障害の合併の有無について検討した.運動障害については脳性麻痺はみられず,全て歩行など粗大運動の軽微な障害のみであった.精神遅滞ならびに運動障害の有無については自閉性障害の程度と関係がなかった. 4.結論 本研究で作成したチェックリストにより自閉性に種々の段階があることが指摘された.診察による自閉性の程度とよく相関していたことから本チェックリストの妥当性が確認できた.診察による自閉性の診断では,精神遅滞が中-重度では自閉性の程度をより重度に診断していたので,チェックリストによる方が客観性があるといえる.自閉性の程度により,精神遅滞,運動発達障害の比率には変化がみられなかった.このことから自閉性障害(広汎性発達障害)と特定不能の広汎性発達障害には本質的な相違はなく,自閉性の程度には移行があると考えられた.当初の予測が確認されたといえる.
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