研究概要 |
研究目的: 母乳とくに初乳中には非常に多量のβ-カロチンが含まれている。β-カロチンの生理作用に関して、高齢者の発ガン予防効果は免疫力増強作用とフリーラジカル消去機構によると考えられている。もし母乳中β-カロチンの生理効果を推測するならば、1.プロビタミンA作用。2.抗酸化作用。3.1重項酸素消去作用。4.免疫力増強作用である。今回の検討は免疫力増強作用につき先ず若年成人で検討し、その結果を踏まえて未熟児について検討した。 研究方法: 実験1.若年成人20名を2群に分け、1群(10名)に乳糖カプセル、他群(10名)にβ-カロチンを44週間投与し、投与前後の白血球T細胞B細胞数とともにT細胞のC4,C8,Natural killer cell,Memory T cell,Suppressor Tcell,Cytotoxic cell,Virgin T cellを測定した。 実験2.大阪医科大学附属病院周産期センターの出生時体重1,500g以上の異常の少ない未熟児の中、人栄養児を2群に分け、1群(3名)はvehicle他群(5例)にβ-カロチンを1日2.5mg2週間投与、投与前後で、T細胞のC4/C8比を測定した。 研究結果: 若年成人では、44週間のβ-カロチン1日60mg投与によりC4/C8比にのみ変化がみられ、この比は投与終了後統計学的に有意に上昇し(1.57 VS 1.03,p<0.05)免疫力の増強が示唆された。したがって、未熟児に対しては、上記の条件でβ-カロチンの投与を行ない、C4/C8比のみを検討した。しかし、未熟児のβ-カロチン投与群の投与後の比2.71に対して非投与群では2.74で両群間に差は見られなかった。成人群に対して投与期間が少ないことによるものかもしれない。しかし、血中β-カロチンは投与群は非投与群の約50倍の高値であった。未熟児の成績に関しては、さらに症例を増加してから報告する予定である。
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