研究概要 |
尋常性乾癬は難治性の慢性炎症性皮膚疾患である.紫外線療法は第一選択の治療法であるが,最近では治療成績の改善と副作用の軽減を目的に他剤との併用療法が試みられている.今回は,紫外線併用療法の奏効機序を臨床研究および基礎研究によって検討した. 1.尋常性乾癬における紫外線療法と活性型ビタミンD3外用薬との併用療法の有用性とその奏効機序に関する臨床研究 ソラレン紫外線照射(PUVA)と活性型ビタミンD軟膏併用療法(PUVA+VD)を尋常性乾癬10例に行ない,その治療効果を対称部位に施行したPUVAとステロイド外用併用療法(PUVA+ST)またはPUVAと白色ワセリン外用併用療法(PUVA+WP)のそれと比較検討したところ,PUVA+VD併用療法は,PUVA+STまたはPUVA+WP療法に比べて早期に皮疹の軽快をもたらすことが明らかになった.PUVA+VDはPUVA+STまたはPUVA+WPに比べて,表皮肥厚の減少,錯角化の減少,顆粒層の出現,BrdU陽性細胞数の減少,湿潤T細胞数の減少,HLA-DR陽性細胞数の減少,細胞接着因子の発現抑制をより顕著にもたらした.これらの成績から,PUVA+VD併用療法はPUVA+STまたはPUVA+WPに比べて,表皮増殖,角化異常および免疫炎症反応をより顕著に抑制することによって優れた治療効果をもたらすものと考えられた. 2.紫外線療法とシクロスポリンAとの協調作用に関する基礎研究 シクロポリンA(CyA)と中波長紫外線(UVB)との協調作用を検討する目的で,以下の動物実験を行った.CyA(5-50mg/kg)または溶媒(オリーブオイル)をBALB/cマウスに5日間経口投与したのち,サンランプを用いてUVBを耳介に100-500mJ/sq cm照射した.表皮細胞の増殖能をBrdUラベリング法によって観察した.UVB照射後,BrdU陽性細胞数は一時的に抑制され,24時間後には逆に上昇する.CyAはUVB照射24時間後のBrdU陽性細胞数の上昇を有意に抑制したが,溶媒のみでは抑制はみられなかった.また,CyA+UVB処置は,各々単独に比べて,有意にADP陽性表皮ランゲルハンス細胞(LC)の数を減少させた.乾癬は表皮増殖亢進と免疫異常(たとえばLC数の増加)を特徴とする.CyAはUVBと協調的に働いて,乾癬に治療効果を発揮する可能性が示唆された.
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