研究概要 |
1)EGFファミリー細胞成長因子に関する研究成果 平成7年度の報告書で、HB-EGFが表皮ケラチノサイトをオートクリン様式ととも相互刺激様式により自己増殖を刺激していることを明らかにした。今年度はHB-EGFのin vivo正常皮膚における役割を明らかにする目的で、HB-EGFの局在を免疫組織学的に検討し、乾癬における局在と比較した。HB-EGFは表皮全層に存在し基底細胞にも認められた。これは、TGF-alphaが主として表皮上層に存在し、基底細胞層に存在しないことと異なっていた。乾癬病変部では表皮全層に存在したが、その染色性は正常皮膚に比べ増加しており、病変近接正常皮膚から病変部への移行部で、特にこの現象が明らかであった。 2)TGF-beta細胞成長因子に関する研究成果 TGF-beta isoform(TGF-beta 1,2,3)の正常皮膚および乾癬病変部の局在をこれらの前駆体に対する抗体をも地いて免疫組織学的に検討した。TGF-beta 1は正常皮膚および乾癬病変部ともその存在が確認できなかった。TGF-beta 2は正常表皮の主として細胞間に存在し、一部は細胞質にも認められた。乾癬病変部ではその染色性が減少しており、病変近接正常皮膚から病変部への移行部で、TGF-beta 2染色性が変化する事が確認された。TGF-beta 3は正常皮膚および乾癬病変部とも真皮上層に認められ、その染色性は両者の間で特に差違は認められなかった。TGF-beta 2が表皮に存在し、乾癬病変部で減少していることは、乾癬病変部の表皮細胞増殖が亢進していることと一致すると考えられ、TGF-beta 2が乾癬の病態形成に関与する可能性が示された。
|