研究概要 |
培養表皮ケラチノサイトおよび正常人皮膚、粘膜上皮、各種皮膚疾患(炎症性皮膚疾患、皮膚腫瘍)におけるcornifin a、 cornifin βのmRNAおよび蛋白の発現の違いをノーザンブロット、イムノブロット、免疫組織により検討した。ノーザンブロットの結果、cornifin aは分化ケラチノサイト、正常人皮膚、正常口腔粘膜上皮、乾癬病変部、ボ-エン病、有棘細胞癌、verrucous carcinomaなど皮膚、粘膜を問わず、棘細胞分化する上皮組織で0,8kb transcriptの発現を認めた。cornifin βは正常口腔粘膜上皮、verrucous carcinomaで1.1kb transcriptの発現を認めたが、分化ケラチノサイト、正常人皮膚、乾癬病変部、有棘細胞癌ではmRNAの発現は認められなかった。イムノブロットの結果、cornifin aは正常皮膚では頭皮、足底に14.0kD蛋白の発現を認めたが、体幹、四肢の皮膚からは検出できなかった。また、乾癬病変部、verrucous carcinomaなどで、14.0kD蛋白のほか16.0kD,25kD蛋白の発現の増強がみられ、一般に炎症や、腫瘍でcornifin αの isoform発現が誘導されることが示唆された。人正常および病変部皮膚粘膜上皮における両蛋白の発現を免疫組織にて検討したところ、cornifin αは足底、手掌の表皮顕粒層、毛襄の内毛根鞘 、口腔粘膜上皮の有棘層上層などに発現しており、体幹、四肢の正常表皮ではほとんど発現せず、乾癬、偏平苔癬など多くの炎症性皮膚疾患では発現が亢進していた。一方、cornifin βは口腔粘膜上皮、食道粘膜上皮の有棘層上層で発現を認めたが、正常皮膚や毛襄、皮膚疾患病変部ではverrucous carcinomaを除いて発現を認めなかった。以上の研究の結果、cornifin αが皮膚の表皮、口腔粘膜上皮両者に発現するのに対し、cornifin βが口腔食道粘膜上皮に特異的に発現する蛋白であることが証明された。
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