研究概要 |
ウサギ実験的黄色腫組織から抽出したLDLは黄色腫病変部に存在しうるLDLであり、ウサギ黄色腫とインキュベーションしたLDL(m-LDL)は病変部で血管外に漏出したLDLが修飾を受けたものと見なすことができ、いずれも酸化的修飾を受けたLDLであることはすでに確認している。末梢血単球あるいは単球性白血病細胞株であるU-937細胞から分化させたマクロファジ-をこれらLDLを含む培地中でインキュベーションした後、培地中のIL-1β,IFN-γ,TNF-αおよびGM-CSFの濃度をEASIA法キットを用いて測定した。2種のマクロファージは同様の結果を示し,IL-1βの産生は抑制され,IFN-γの産生は増強され,TNF-αの産生には影響がみられなかったことは、これら酸化LDLはマクロファージに対しては黄色腫病変形成を促進的に作用するサイトカインの産生を刺激していないか、むしろ抑制していることを示唆した。一方,GM-CSFの産生が増強したことは黄色腫病変促進的に作用することが示唆された。 ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をm-LDLで刺激した後、ICAM-1,VCAM-1およびELAM-1を免疫組織化学により染色し、その発現をFACScanで解析した。泡沫細胞浸潤性病変発症には,VCAM-1が重視されており,ICAM-1の役割については賛否両論がある。今回の実験ではICAM-1の発現誘導は認めらず、VCAM-1とELAM-1はLDLの濃度依存性に、また経時的に発現誘導が増強されたが、いずれが主役を果たすかという点は明らかにできなかった。この接着分子発現へのNF_κBの関与をP65を抗原決定基とする抗体を用いて蛍光抗体法により検討したが,m-LDLによる刺激によってHUVECでの特異蛍光の細胞質から核への移行は認められなかった。このことは,m-LDLによる内皮細胞の接着分子発現には,transcriptional factorであるNF_κBは関与していないことを示唆する。
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