研究概要 |
昭和57年より現在まで,我々の教室における単純ヘルペス後の多形紅斑(PHEM)患者は16例であり,その出現頻度は,多形紅斑患者157例中16例(10%),単純ヘルペス患者1439例中16例(1%)であった.比較的若い成人女性に好発し,HSVは1型と2型のいずれでも発症した.単純ヘルペス出現後EM出現までの期間は1〜2週間であった.EIA法による血中HSV-1IgGでは常に90以上と高値を示したが,EEM出現時に必ずしも上昇するとは限らなかった.抗ウイルス剤の予防投与によりPHEMの発症は抑制可能であったが,モノクローナル抗体による皮疹部のHSV抗原の検出およびウイルス分離培養は陰性であった. 患者本人の承諾の上で,皮疹部,無疹部、末梢血単核球および咽頭ぬぐい液より,DNAを抽出し,増幅領域がそれぞれ,92base pairs(92bp),110bp,144bp,330bp,および847bpのポリメラーゼ連鎖反応でHSVDNAの検出を試みた.92bpのプライマーを用いた場合のみ,一部の皮疹部と単純ヘルペス治癒後の色素脱失斑でHSVDNAが検出され,その他の110bp,144bp,330bp,および847bpのプライマーではすべての検体でHSVDNAは検出されなかった.現在まで,皮疹部からは92bpのプライマー以外でHSVDNAが検出されたことはなく,その特異性に疑問がもたれた.またHSVDNAがEEM皮疹部に存在するとしても,単純ヘルペス治癒部位よりDNA量は少ないと考えられた。 症例15と16で施行した免疫組織染色では,早期の皮疹部では,表皮内にCD8+リンパ球の浸潤がみられ,CDla+細胞が減少していた.表皮細胞にはHLA-DR,ICAM-1およびTNF-αが発現され,真皮にはMac387+およびCD68+細胞が多く存在し,その発症機序にmonocytes-macrophagesの関与が強く示唆された.
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