研究概要 |
小肝細胞癌に対する肝動脈亜区域塞栓術の治療効果を向上させるためには,動脈側からの注入でperibiliary venous plexus (PBP)を介して門脈に流入し,門脈血流も一時的に遮断できる塞栓物質が望ましい。この目的ではLipiodolが優れていることが知られているが,Lipiodol単独ではその効果は一時的で十分ではない。今回Lipiodolの種々の他の塞栓物質との混合物の中でこの目的に最も適したものを検討する目的で実験的検討を行った。成犬を用い,Lipiodol単独,Lipiodolとヒストアクリルの種々の割合の混合液,Lipiodolとabsolute ethanolの混合液,LipiodolとGelfoam powderの混合液を肝動脈から注入直後および10日後に,軟線撮影とLipiodol染色で,Lipiodolの肝内での分布を組織学的に検討した。その結果LipiodolとGelfoam powderの混合物でPBPと門脈に最も強くLipiodolの残存が認められ,また肝の区域性の壊死も強度であった。以上の結果より,現在使用可能な塞栓物質の中ではLipiodolとGelfoam powderの混合物が小肝癌に対する亜区域塞栓術の塞栓物質として有用であると考えられた。 また,これらの塞栓物質の肝内での動態をin vivoで観察し,新たな有効な塞栓物質を開発する目的で生体顕微鏡下に肝内血流を観察するシステムを構築し,現在in vivoでのLipiodol等の動態研究を開始したところである。
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