研究概要 |
悪性リンパ腫に対する放射免疫療法の基礎的検討として前年度は抗体の反応性を中心に評価した.引き続いて,本年度は抗体を放射性同位元素(以下RI)により標識法する方法を検討した.さらに,腫瘍親和性のあるRI標識薬剤がどのように腫瘍細胞に摂取され,細胞内で分布するかを検討した. マウスIgGにイットリウム-90(Y-90)およびインジウム-111(In-111)を標識する方法を検討した.通常,タンパクに金属RIを標識するにはキレート剤を介して行われる.今回,検討したキレート剤としてはisothiocyanatobenzyl ethylenediaminetetraacetic acid(SCN-Bz-EDTA)であり,まず,IgGにSCN-Bz-EDTAを結合させた.その後,RIを加えることにより標識が完成する.この場合,In-111標識ではSCN-Bz-EDTA結合IgGから未結合のキレートを除くことによってその最終的な標識率は80%を越えたが,これを除かなかった場合,その標識率は0%であった.それに対し,Y-90の場合は必ずしも未結合のキレートを除く必要はなく,除かなくても十分な標識率が達成できた.In-111標識の場合,標識率が高くても,大量のEDTAを後から加えるチャレンジテストを行うと,容易にIn-111ははずれてしまう.それに対し,Y-90標識の場合,60%前後の標識ではあるが,EDTAチャレンジでは30%程度しか遊離しなかった.腫瘍親和性を有するTc-99m-MIBIやTc-99m-tetrofosminの培養腫瘍細胞への取り込みを検討し,nigericin,ouabain及びcarbonyl cyanidem-chlorophenylhydrazoneにて前処置を加えることによる取り込みの変化を調べた.その結果,MIBIやtetrofosminでは細胞内のミトコンドリアがその集積に関与していることが示唆された.これらの所見は従来,腫瘍シンチ用剤として使用されているT1-201とは異なっていることが示された.
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