研究概要 |
骨は力学的環境に適応して自らの形態を再構築する能力を有している.骨に加わる圧縮力を支えている腫瘍成分は骨基質であり,その力方向に対する各垂直断面の骨基質の重心点は連続し,その軌道(重心線)は加えられた圧縮力の方向に一致すると推測される. 我々は骨の単純X線写真からフイルムデジタイザーを用いて骨基質の分布情報を取り出し,デジタル画面上で上記の重心線を描出した.また,局在性骨病変周囲での重心線の偏位を半定量的に評価し,骨病変の鑑別疾患を試みた.このシステムの充実をはかり,さらに我々のシステムと既存の画像保管システム(PACS)との連動を行い,その応用範囲をCR像やCT像にも広げることを現在試みている. 骨腫瘍約20例の臨床検討では,我々の解析方法の骨腫瘍の鑑別診断への応用に基本的に誤りのないことが確認された.即ち,悪性骨腫瘍においては重心線の偏位が大きく,また,重心線は腫瘍と反対側に偏位していた.これに対して,良性骨腫瘍では重心線の偏位が少なく,その方向もむしろ病変側に向いていた. 我々のシステムと既存の画像保管システム(PACS)やCT,CR装置との連動は、このための設備備品(インターフェイス)の設置が終了し,現在さらに臨床応用の範囲(関節疾患など)を広げている.また,PACS装置を介さずにCT画像のデジタル情報を直接我々の画像解析コンピュータに取り込み処理する方法も検討しており,本システムをより一般化できる可能性がでてきた.
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