研究概要 |
従来の画像診断では早期の前立腺癌,あるいは移行域に発生した癌の検出は困難であった.このため,正常前立腺組織と癌組織の間での代謝情報の違いをプロトンMR spectroscopy(MRS)で得て,更に分布の様子を画像化することを目的とした. 1.5テスラ超伝導型MRI装置を用いた.健常ボランティアで検討した結果,送信には躯幹コイルを,受信にはプロトン用直腸内コイルを使用することで,Multivoxel法(2D-CSI)でスペクトルを得ることができた.このスペクトル中に正常前立腺に多いとされるクエン酸ピークの同定が可能であったが,そのピークの多寡を各voxelごとに表示できるほどの強い信号は得られなかった.プロトンMRSでは水や脂肪からの信号の抑制が非常に重要であるが,これが不十分であったためnoiseも増加した.このため前立腺癌の症例に同様な方法で撮影を行っても正常組織と癌組織のクエン酸の分布の違いを画像にするのは困難と考えられ、前立腺癌症例での検討は未だ行っていない.現在,水および脂肪抑制の効果的な方法の検討を行うとともに受信コイルである直腸内コイルの改良中であり,signal to noise ratioを向上させることで良好なクエン酸のピークを得て,その分布を画像化し,病理学的検討を加える予定である.
|