研究概要 |
臨床的に軟部組織より発生したと思われた腫瘤性病変160例に対してMRI検査を施行した.造影MRI,Dynamic MRIはほぼ全例に施行可能であった.手術あるいは生検が施行され,病理組織診断が得られたものは122例で,手術施行例のうち18例においては,MRI像と病理像との詳細な対比検討を行った.最近の55例については,prospectiveにMRIの診断能を検討した. Dynamic MRI所見も加えたMRI像は,肉眼病理像を比較的よく反映していた.それにより.腫瘤内の脂肪成分,脂肪変性,嚢胞成分,液化壊死,粘液腫様成分,硝子軟骨性成分,膠原線維性成分,出血,出血壊死,凝固壊死,おから状成分,vascularityなどの推察がほとんどの症例で可能となり,質的診断において,内部成分の構成とその分布およびに臨床情報からあげた上位3つの鑑別診断にほとんどの症例で合致しており,鑑別診断を絞り込むという当初の目的は達成されたと判断した.疾患別の検討としては,症例の積み重ねにより,特に頻度が高い脂肪性腫瘍,血管性腫瘍,末梢神経腫瘍,粘液基質性腫瘍などの鑑別能の向上がみられた.良悪性の鑑別については,典型的所見を呈する約7割の例では鑑別可能であったが,Dynamic MRIのみでは例外も多く良性と低悪性度の腫瘍との鑑別や悪性と活動性の炎症性腫瘤との鑑別が困難であり,MRI診断の限界が示唆された.治療効果判定には,sizeや内部性状の変化にDynamic MRIのパターンの変化を加えることで,より正確な判定が可能となった.しかし一部の症例でvascularityの増加を再発と誤診したものもあり,今後の課題と思われた. また今年度から造影剤を用い経時的に3-4回繰り返し行うDynamic 3D MR Angiographyを使用し,小病変の発見,関与血管の検索,経時的造影経過の視覚的認識などに有用性が認められた.
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