目的:先行研究において、精神分裂病と9番染色体動原部(pericentric region)の逆位との関連が、細胞遺伝学的検索によって認められた。そこで精神分裂病9番染色体動原部領域の遺伝子マーカーとの連鎖研究および関連研究によって、分裂病の遺伝子座位を同定することを目的として研究を行った。 対象と方法:患者群(60名)と対照群(60名)について9番染色体動原部領域にあるD9S55(短腕部)、D9S15およびD9S202(いずれも長腕部)の3つの座位のVNTR(Variable number of tandem repeat)をPCR法によって増幅し、アクリルアミドゲル電気泳動によってalleleを検索し、両群のalleleの頻度を比較した。また分裂病多発家系3家系37名(罹患者17名非罹患者20名)を対象として当該VNTRをもちいて連鎖を検討した。 結果:D9S55およびD9S15において両群に頻度の差は認められず、関連は認められなかった。また3つのマーカーで多発家系との連鎖は認められなかった。 結論:先行研究は偽陽性所見であり、分裂病の遺伝子が9番染色体動原部領域に存在する可能性は乏しいと考えられた。
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