研究概要 |
本研究の目的は,次の3点である。(1)精神分裂病患者には,ストレスへの対処技能をはじめとするさまざまなsocial skillsの障害があり,そのために長期経過が不良となりやすいか,その基盤の1つとして認知機能障害が存在することが想定されている。そこで認知機能とsocial skillsとの関連の解析をこころみる。(2)社会生活技能訓練(social skills training)により,social skillsの向上をはかり,同時に認知機能の変化を測定する。(3)social skillsの向上により再発防止効果がみられるかどうかを検証する。 平成6年度は,(1)と(2)とを遂行する予定である。 対象 DSM III-Rによって精神分裂病と診断された20名で,平均年齢30±5.6歳,WAIS-R 81.5±15.9,BPRS′10±3.7,GAF 47±8.9,クロルプロマジン換算服薬量326±212mg/day,これまでの平均入院回数1、1±0.9回。 方法 対象のうち半数はデイケア通院+社会生活技能訓練を実施。のこりの半数は外来通院治療である。 対象者全例に,pre-test(H6.5月〜9月),post-test(H6.11月〜H7.3月)として,以下のテストバッテリ-を実施。a.) social skillsの評価。ロールプレイテスト,福岡大学版社会生活技能尺度,東大版生活技能評価尺度,自己評価アンケート。b)認知機能の測定。oddball課題を用いた聴覚性事象関連電位,WAIS-R,ハ-ロ-のことわざテスト。c)精神症状の評価。BPRS,GAF。 現在post-testの実施中である。 結果 pre-testは終了した。ロールプレイテストの評価は終了し,評価者間信頼性も検定したが,ANOVA-ICCでおおむね0.5以上と実用上問題のない値であった。事象関連電位及びハ-ロ-のことわざテストについて,現在データ解析中である。
|