Fisher系雄ラットがレバ-押しによる2音弁別oddball課題を遂行中に、脳表面における事象関連電位と同時に背側海馬におけるニューロン発火及び海馬内事象関連電位を記録し、ラットの事象関連電位発現における海馬の関与を検討した。 脳表面では標的音に対してN40、P100、N200、P450の事象関連電位成分が観察された。非標的音に対してはP100のみが明らかに誘発され、標的音に対するラットのP450は人のP300に対応することが示唆された。 ガラス微小電極を用い海馬のニューン発火を記録した結果、約6割のニューロンにおいて、標的音に対してのみ潜時約100msから550msの間、ニューロン発火が持続的に上昇することがわかった。発火のピークは約290msであり、表面のP450成分のピークよりやや先行していた。 ステンレス慢性埋め込み多段電極を用い、脳内の事象関連電位を記録した結果、海馬のCA3領域において他の部位よりも大きな振幅の陽性電位が、表面P450成分に対応して観察されることがわかった。しかし、海馬内での位相の逆転はみられなかった。 以上の知見より、ラットの事象関連電位のlate positive成分の形成と海馬の神経活動は関連していることが考えられた。しかし、ニューロン発火とP450のピークのずれがあり、海馬内での位相の逆転の欠如も認められることにより、他の脳部位の関与の可能性も検討する必要があると思われる。
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