研究概要 |
1.培養マウス腎メサンギウム細胞泡沫化機構の解析 1)結合・競合実験ではβ-VLDLとLDLはそれぞれKd=3.8と13.7μg/ml,Bmax=65.9と71.9ng/mg cell proteinの特異的結合を示し,その結合は互いに競合したが,アセチルLDLとは競合しなかった。また,β-VLDLとLDLの結合能はメサンギウム細胞へのコレステロール前負荷により35.4と53.5%抑制された。 2)β-VLDL,LDLおよび抗LDL受容体抗体を用いたLigand blottingおよびimmunoblottingの結果,結合蛋白はいずれも約130kDaの同一のバンドとして認められた。 3)コレステリル・エステル形成実験では,β-VLDLはLDLの約3倍のコレステリル・エステル形成をみた。この形成は抗LDL受容体抗体の添加により濃度依存性に減少した。 4)β-VLDLの長期添加により,メサンギウム細胞内にoil red O染色陽性像が顕著に認められた。 以上の結果から,β-VLDLとLDLは共にLDL受容体を介して細胞内に取り込まれこと,β-VLDLではdown regulationを受けにくいことが示唆され,β-VLDLはLDL受容体だけでなく他の受容体を介して細胞内に取り込まれることが推測された。そこで,LDL受容体欠損培養家兎メサンギウム細胞を用いて同細胞の泡沫化機構を検討した。 2.LDL受容体欠損培養家兎メサンギウム細胞泡沫化機構の解析 1)β-VLDLの長期添加により,メサンギウム細胞内にoil red O染色陽性像が顕著に認められた。 2)VLDL受容体に対する特異的primerを作成,RT-PCR法を用いて,これを増幅し,sequenceを確認,Nothern blotにてメサンギウム細胞にVLDL受容体mRNAの存在を確認した。 3)メサンギウム細胞にコレステロール負荷し,その前後でVLDL受容体mRNAとLDL受容体mRNAの変化をNothern blotで検討し,VLDL受容体mRNAに変化はみられなかった。一方,LDL受容体mRNAは著しく減少した。 以上の結果から,β-VLDLのもう一つのメサンギウム細胞への取り込み経路として,コレステロール負荷によりdown regulationを受けないVLDL受容体経路が明かとなった。
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