研究概要 |
本研究の1994年度内の研究目的は,1)日本人IDDMの臨床的特徴が遺伝的な要因によるものか、さらに2)IDDMの発症機序において,この遺伝的要因の可変性がgenomic imprintingに基づくものであるのかどうか,を明らかにすることであった.疾患の異質性を明らかにするために,発端者として発症当初から抗GAD抗体が陰性のIDDM10例,抗GAD抗体陽性のIDDM10例,および抗GAD抗体陽性患者の第一度近親者30名を選んだ.本研究について承諾を得た上で、患者および近親者より採血し、PCR-RFLP法によってDQA1,DQB1およびDRB1座位の各遺伝子型を決定した. DQA1遺伝子型の解析から抗GAD抗体陽性IDDMではその70%が欧米白人でassociationを示す対立遺伝子^*0301のホモ接合^*0301/^*0301を有しており,この遺伝子型へのassociationを示した。一方の抗GAD抗体陰性IDDMでは^*0301のホモ接合を有するものは30%と少なく、しかもヘテロ接合^*0301/Xは抗GAD抗体陽性IDDMおよび健常者と比較して多かった.このように抗GAD抗体価によって分類された2つのIDDMグループでは同じ座位の同じ対立遺伝子^*0301であるにもかかわらずassociationのパターンに相違を認め.DQA1座位における人種内のallelic heterogeneityを認めた.DQB1座位の遺伝子型の決定は抗GAD抗体陽性患者とその第一度近親者について行った.抗GAD抗体陽性日本人IDDMでは欧米白人において関連が知られているDQB1^*0302だけに有意なassociationを示し、人種間での遺伝的異質性は認めないことが判明した。さらにハプロタイプの検討によって、対象とした10家系においては疾患感受性対立遺伝子は全て母親由来であることが判明し、IDDMの遺伝様式におけるHLA遺伝子領域内のメチル化が強く示唆された。
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