研究概要 |
バセドウ病の甲状腺では、血流量が増大している成因を解明するために、ヒト甲状腺濾胞を培養して、total RNAを抽出し、VEGF mRNAの発現をNorthern blot法で検討した。 ヒト甲状腺濾胞細胞はVEGF mRNAを発現しており、その発現はinsulin,TPA,dibutylyl cyclic AMP,TSH,およびバセドウ病患者のIgGで刺激されることを見いだした。 なお、ラットを抗甲状腺剤入りの飼料で飼育すると、TSHが増加し、甲状腺も血流量が増大し、甲状腺も腫大してくるが、このような甲状腺はVEGF mRNAを著しく産生しており、かつVEGF receptor(flt)mRNAの発現も亢進していることが見いだされた。 したがって、バセドウ病患者の甲状腺で、血流量が増大しているのは、TSH受容体刺激性の免疫グロブリンにより、甲状腺が刺激されているからであることが見いだされた。なお、以上の結果は、J Clin Invest誌にほぼacceptされており、年内に掲載されると思われます(Sato K,Yamazaki K,Shizume K,Kanaji Y,Obara T,Demura H,Ohsumi K,Yamaguchi S,Shibuya M:Stimulation by TSH and TSH receptor antibody of vascular endothelial growth factor mRNA expression in human thyroid follicles in vitro and flt mRNA expression in the rat thryoid in vivo. J Clin Invest(in revision) なお、このヒト甲状腺の濾胞培養系を用いて、慢性肝炎のinterferon治療時に生じる甲状腺機能低下症の機序(論文1参照)や,hCG産生腫瘍により生ずる甲状腺機能亢進症の成因が明らかにされた(論文2参照)。
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