研究概要 |
Cキナーゼ活性化作用を有するphorbol myristate acetate(PMA)やcAMP、サイトカインなどのウロキナーゼ(uPA)とその阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター2(PAI-2)の白血病/悪性リンパ腫細胞株(PL-21とRC-K8)での遺伝子発現に対する影響の検討が行われた。cAMPがRC-K8細胞でのuPA遺伝子の転写の抑制をしてuPAの産生を減少させ、その作用は、de novoの蛋白合成を必要とし、またcAMP依存性蛋白リン酸化キナーゼ(PKA)活性依存性であることが判明した(BBA 1268、1995)。Prostaglandin I2(PGI2)は、アデニル酸シクラーゼを活性化して細胞内cAMPレベルを上昇させる。その安定化誘導体であるBeraprostが、RC-K8細胞のPKAの活性を上昇させるとともに、uPA産生を抑制することも明らかとなった(Thromb Haemost 1996,in press)。また、RC-K8細胞には、IL-1リセプターが存在し、IL-1α、βが、uPAの転写効率を高めることでPAの産生を誘導することが判明した(Thromb Haemost 74、1995)。さらに、double stranded AP1 oligoを用いたgel-shift assay法にて、RC-K8細胞中にTPA-response elementに結合する蛋白(TREB)が存在し、それがPMA刺激で増加することが観察され、PMA刺激にTREBが関与することが示唆された。一方、IL-1の場合は、TREBの増加は観察されなかった。PAI-2に関し、cAMPとPMAが異なる機序によりPAI-2遺伝子の発現を誘導し、両者間にクロストーク機構の存在していることが明かとなった(Thromb Haemost 72,1994)。そして、TREBの一種であるAP1蛋白をコードするc-fosのantisense S oligoが、PMA及びcAMP誘導PAI-2遺伝子発現に、抑制的に働くことがRT-PCR法で確認された。また、複数のTREBがPL-21細胞には存在し、その結合量がPMAの刺激で増加することが判明した。細菌内毒素であるlipopolysaccharide(LPS)がいずれの細胞でもそれぞれuPAおよびPAI-2の産生を誘導することが判明した。IL-1の中和抗体は、LPSによるuPA誘導作用を抑制せず、LPSがIL-1系を介さないでuPAを誘導していることが明かとなった(Thromb Haemost 74,1995)。しかし、RC-K8は、LPSレセプターCD14を細胞表面に発現していないので、LPSは、まだ良く知られていない機序でuPA産生を誘導するものと推定され、現在、そのメカニズムを検討中である。
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