研究概要 |
代表的抗白血病剤の臨床投与時の血中濃度時間曲線の推移を正確に反映した条件下での薬剤の代謝・作用を検討することはきわめて重要である。本年度は昨年度迄に確立した血中薬剤濃度自動シミュレーター作動下での培養実験系において、白血病細胞株K562をcytosine arabinoside (ara-C)存在下に培養し、投与開始24時間後の細胞増殖阻害効果につきtrypan blue dye exclusion (TB)法、及びclonogenic assay (CA)法を用いて検討をすすめた。臨床的通常量療法に相当するara-C 100mg/m^2をAUCを等しくして、2, 4, 8, 16時間で投与した条件を設定すると、その増殖は非添加群に比しTB法でそれぞれ73%,53%,39%,45%、CA法で76%,72%,34%,15%であり、CA法において明瞭な阻害効果における時間依存性が確認された。さらに白血病治療の一方のkey drugであるdaunorubicin (DNR)についても同様の検討を行い、その結果を静置条件下での培養系のdataと比較検討した。DNR 40mg/m^2を30分で投与した条件(Cmax 0.20μM, t1/2β 4.35hr)でシミュレートするとその増殖はCA法で非添加群に比し82%であり、これと同等の阻害効果を示すDNR濃度は添加後24時間静置条件下ではCA法で0.022μMで、Cmaxで比較するとシミュレーター群では同等の細胞増殖阻害効果のために約9.1倍の濃度を要した。この結果は昨年度報告した臨床的中等量療法に相当するara-Cの濃度をシミュレートした条件においてはシミュレーター群で約80倍の濃度を要するという結果と異なり、薬剤の作用・代謝における相異を1部反映しているものと推測された。それに加えて、臨床投与時の効果を静置培養による増殖阻害効果で推測することは困難でありシミュレーターを用いた検討の重要性が明らかとなった。また効果判定としてTB法に比しCA法の有用性が推測された。現在、本検討に加えara-CとDNRの血中動態を同時にシミュレートした条件下でも、同様の検討を行っている。
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