研究概要 |
PNHの各種血球(赤血球、血小板、顆粒球、赤芽球、Tリンパ球、Bリンパ球、CD34陽性細胞)におけるGlycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー膜蛋白(CD55,CD59)の形質発現をフローサイトメトリーによるtwo-color分析を用いて検討するとともに、顆粒球、Tリンパ球およびCD34陽性細胞を対象として、Phosphatidylinositol glycan-class A(PIG-A)遺伝子の異常についても検索した。その結果、 1.PNH症例の各種血球におけるCD55およびCD59の形質発現は、各血球間でdiscordantであった。特に、我々はPNH赤血球と赤芽球(In vitro)のphenotypeとの関連性について検討を行った。PNH症例はPNH赤血球のphenotypeとは無関係にPNHII型およびIII型赤芽球を有しており、PNHII型赤芽球の存否が最終的にPNH赤血球のphenotypeを決定していることが判明した(Shichishima et al.,Blood,In press)。 2.PNHの末梢血顆粒球およびTリンパ球を対象とし、PCRおよびRT-PCRを行い最終的にnucleotide sequence分析によりPIG-A遺伝子の異常性を検討した。今回我々は、PIG-A遺伝子の異常クローンの割合と各々の血球のphenotypeとに注目し、PIG-A遺伝子の異常性はPNHの発症と確かに関連性を有しているものの、PNH血球のphenotypeまでは規定しておらずGPIアンカーのコアの量を決定している事を見出した(Noji,Shichishima et al.,Blood 86:132a,1995)。 3.フローサイトメトリーによるone-color分析によれば健常者の骨髄血CD34陽性細胞におけるCD59の形質発現は単一の陽性細胞群からなり、PNHでは陰性〜陽性までの連続的なpopulationからなっていた。PNH症例のCD34陽性細胞におけるPIG-A遺伝子の異常は同一症例の末梢血顆粒球の異常と一致していた。今後、PNHのCD34陽性細胞において複数のPIG-A遺伝子の異常がないかどうかを慎重に評価する必要があると考えられた。
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