研究概要 |
心筋梗塞や、脳血栓の治療薬として、種々の血栓溶解剤が模索されている。黄色ブドウ球菌の産生するスタフイロキナーゼ(SAK)はその一つである。SAKそれ自身はプラスミノゲン(PG)活性化(PA)活性を持たない。また、PGが活性化されたプラスミン(PG)もPA活性を持たない。しかし、両者が結合するとPA活性を持つようになる。しかもこのPAは血栓特異性を有する。この活性化機構の分子機作の解析が本研究の目的であった。当該年度にかなり解析は進行し、その一部を投稿した(BBA in press),更に現在Major Journalに数編を投稿準備中である。以下順にその概略を述べる。 1.PMとSAK-PM複合体の基質特異性の違いを以下の方法で解析した。(a)PMに特異的な合成基質(HD-Val-Leu-Lys-pNA)を用いて化学反応論的に両者が極端に異なることを証明した(この基質に対するKmがPMに対し、SAK-PMは約10倍大きくなる)。(b)Glu-PGのN末端ペプチドの限定分解は、PMにより速やかに進行するがSAK-PMによっては認められないことを、分解産物のN末端アミノ酸の同定と、SDS電気泳動にて証明した。 2.PGとSAK,PMとSAKの結合反応の分子機作を解析した。方法は、イプシロンアミノカプロン酸、アプロチニン、DEP,PAPMSF,などを利用し、PGのエラスターゼや、V8による分解産物、mutant recombinant SAK,放射性ヨードで標識したそれぞれの蛋白質を用いて施行した。結果、これまでの報告とは異なり、この反応が2段階反応であることや、両者の結合に関与する部位がかなりのレベルまで明らかになった。現在、更に他の方法で結果を確認するとともに解析を進め、幾つかのJouranalにまとめて報告する予定である。
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