研究概要 |
活性酸素が変性性疾患や慢性炎症性疾患において発症,悪化原因と成っている. 申請者は尿毒症起因物質メチルグアニジン(MG)が,クレアチニンと活性酸素(ハイドロキシルラジカルに特異的)が反応し産生されることを発見し,これを用いてネフローゼ症候群を起こすピューロマイシンアミノヌクレオシド(PA)が実質細胞の活性酸素の増加を起こすことを世界で最初に報告した.今回 Dichlorofluoscene Diacetate(DCFH-DA)をもちいて活性酸素を光に変換し,顕微鏡下で単離組織細胞や糸球体の活性酸素を超高感度テレビカメラで光学的に測定する方法を検討した.DCFH-DAは細胞内に入り,分解してDCFHとなり,過酸化水素や過酸化脂質と反応すると蛍光を発する.申請者は既にこの方法でPAを投与したラットから単離した糸球体が全体に強い光を出すことを報告したが,今回 1.In vitroでの糸球体の活性酸素の増加過程を検討した.正常ラットにDCFH-DAを投与したのち,単離した糸球体にPA添加したところ15分後に単離糸球体あたり2から3個の強い蛍光を発する点が出現し,45分後には糸球体全体に広がっていくことが観察された.2.C-kinaseを活性化し,蛋白尿を生じる phorbal myristate acetate (PMA)を単離糸球体に添加するとPAに比して蛍光は小さな点として出現し,それ以上は広がらなかった.従来,PAによる蛋白尿とPMAによる蛋白尿の出現機構は活性酸素によるものとして一括して考えられていたが,両者の活性酸素の産生部位(細胞)が異なっていることが示唆された.3.ヘパリンは蛋白尿を減少させる.ヘパリンの活性酸素への作用を検討するとPAで増加するMG産生を3.3u/mlより有意に抑制した.一方の腎臓に生理食塩水を,片方にヘパリンを注入したのち単離した糸球体をPAで刺激すると,ヘパリン注入群で光は減弱した.
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