研究概要 |
平成8年度は,透析患者におけるエリスロポエチン誘発性高血圧に対する抗血小板薬の降圧効果をNOとの関連で検討中であることと,In vitroで抗血小板薬のパナルジンのNO産生に対する影響を培養血管平滑筋細胞で検討した. 臨床検討 貧血を有する安定維持期の透析患者で過去にエリスロポエチン投与にて血圧上昇を認めた症例か、ないしは降圧薬を増量した症例.服薬の良好な患者で体重増加率がDWの5%以内の者を対象としてパナルジン非投与および投与中にエリスロポエチンを投与して、血中NO濃度および各種血管作動物質を測定した。現在,症例を集積中である. 基礎的研究 我々は透析患者におけるエリスロポエチンの昇圧機序検討の一環として、抗血小板薬のジピリダモ-ルがサイトカイン刺激による一酸化窒素の産生を増強させることを培養血管平滑筋細胞で確認している(European J.Pharmacol,296:319,1996).機序に関しては,cAMP分解酵素であるcAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害し,細胞内cAMP含量を増加することによりNO産生を増強することが明らとなった.ただし,ジピリダモ-ルのNO産生増強作用はサイトカインのIL-lβが存在してはじめて発揮されることであり,透析患者では血中サイトカインが増加していることを考えると抗血小板薬がNO産生を介して降圧的に作用しても矛盾はないと考えられた.また,臨床で透析患者に良く使われている塩酸チクロピジンに関しては現在検討中であるが,ジピリダモ-ル同様IL-lβ存在下でNOの産生やiNOS-mRNAを増強することが明らかとなった.機序に関しては,ジピリダモ-ルがcAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害して作用を発揮するのとは異なり,cAMP合成酵素のadenylate cyclaseを刺激して発揮する可能性が示された.今後この結果は,国内の学会や国際学会で発表する予定である.
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