研究概要 |
実験方法:7日間ラットに22%タンパク食(正常タンパク食,NP群)または6%タンパク食(低タンパク食,LP群)を投与した後に抗Thy-1腎炎を惹起させた.各々の食事の投与はラット屠殺時まで継続した.NP群およびLP群のそれぞれの腎炎惹起前,惹起1日後,3日後,6日後,12日後の腎組織を用いて以下の検討を行った. (1)単離糸球体からRNAを抽出しNorthern blotによるPDGF B-chain mRNAの発現 (2)In situ hybridization(ISH)によるPDGF B-chain mRNAの発現 (3)一次抗体として抗PCNA,抗ED-1,抗α-平滑筋Actin(αSMA),抗PDGF B-chainの各々を用いた免疫組織化学およびPAS染色標本による糸球体基質拡大の評価 結果:NP,LP両群で腎炎惹起1日目,3日目のmesangiolysisの出現程度および糸球体へのマクロファージ浸潤に差はみられなかったが,LP群では3日目以後の糸球体内PCNA陽性細胞数,αSMAの染色性,PDGF B-chainタンパクの染色性のすべてがNPに比し有意に抑制された.Northern blotおよびISHによるPDGF B-chain mRNAの発現もLP群において有意に抑制されていた.またメサンギウム基質拡大もLP群で3日後以降,有意に軽減していた. 結論:低タンパク食の投与による糸球体疾患の進展抑制機序の1つとしてメサンギウム細胞の増殖抑制および糸球体内PDGF B-chain mRNA発現抑制を介する糸球体内細胞外基質蓄積の軽減機序が明らかとなった.
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