研究概要 |
初年度は我々がクローニングしたヒトSMP30を規定するcDNAを用いて組換え蛋白を作製した。遺伝子移入し発現させた組換え蛋白の分子量は24KDaであり用いたcDNAから推定されるものと一致した。次に組換え蛋白を可溶化して家兎に免疫し抗体を得た。この抗体を用いて正常の腎臓組織を免疫染色したところ,ヒトの腎尿細管では遠位尿細管に陽性所見が認められた。このSMP30は細胞内カルシウムの移動・代謝に関与しておりヒトではカルシウム代謝が最も活発な部位は遠位尿細管である事実に対応する所見である。さらに作製した組換え蛋白はアミノ末端にpelBリーダー配列を付加しており容易に可溶化が可能であり,次年度ヒト血清中のSMP30の鋭敏な測定法の開発を行った。モノクロナール抗体を3株樹立しWestern hybridization法における抗体の特異性を確認し,蛍光抗体法で組織学的検討を行ないポリクロナール抗体と同様の結果を得た。これらの点から作製したモノクロナール抗体はヒトSMP30特異的と考えられた。次にモノクロナール抗体と可溶化された組換え蛋白を用いてヒトSMP30の微量測定法の確立を行った。ELISA法によるヒト血清中のSMP30量の測定が可能となった。正常健常者血清中のSMP30量は平均5pg/mlであることがわかった。最大のSMP30の産生臓器である肝臓の各種疾患では正常と比較して有意の増加を示した。現在,各種腎疾患でのSMP30の血清動態の解析を進めている。今後肝臓・腎臓疾患の新しいパラメーターになる可能性がある。
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