研究概要 |
1.ラット脳内におけるMn-SODの発現に関する検討 胎齢18,20日及び生後1,3,7,14日目のラットを用い、Northem Blotting法によってMn-SOD mRNAの発現を検討した。Mn-SOD mRNAは胎児期より発現し、新生児期を通じて増加傾向を示した。ラット脳を4%パラホルムアルデヒドによって潅流固定し、免疫組織染色を用いて局在部位を検討したところ、生後早期には、海馬CA3領域にMn-SOD陽性細胞の豊富な出現が見られた。 2.低酸素負荷、虚血負荷がMn-SODの発現に与える影響 生後7日目のラットの左頸動脈を結紮し、その後8%酸素下にて2時間飼育して新生児仮死モデルを作成した。負荷後24時間の時点より神経細胞が壊死に陥った周辺領域のグリア細胞にMn-SODの豊富な出現が見られた。 3.デキサメサゾン予防投与がMn-SODの発現に及ぼす影響とその臨床的効果 新生仔ラットにデキサメサゾンを投与したところ、Mn-SOD陽性細胞の出現は抑制された。また、脳の成熟に伴うグリア関連蛋白の発現も抑制され、形態学的に幼弱な神経細胞の出現が観察された。低酸素虚血負荷前にデキサメサゾンを前投与したところ、ラット大脳における神経障害の発生頻度は有意に低下し、Mn-SODの発現も抑制されていた。これらの結果から、デキサメサゾンの低酸素性虚血性脳障害に対する予防効果は、Mn-SODの誘導によるものではなく、むしろ、大脳の成熟を遅延させることと関係すると推測された。
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