研究概要 |
平成6年度では,ラット開胸侵襲モデルを用いて14C-Inulinを投与した後の血中濃度の推移から,手術侵襲による末梢コンパートメントの増加を認め,非機能的細胞外液量の変動が全身オートラジオグラムにより画像的にも確認された。平成7年度においても昨年度とほぼ同様に14C-Inulinを投与,薬物動態の解析,オートラジオグラムにより,開腹侵襲,膵炎,下肢緊縛疎血再潅流の各モデルによる検討を行った。また,炎症性サイトカインとしてIL-8を指標とした検討を行った。さらに,侵襲による生体反応の制御を目的としたメチルプレドニゾロン(MP)投与により非機能的細胞外液貯留に変化を来すか検討した。 1.開胸侵襲モデルでの検討 開胸侵襲により手術側肺のみならず対側肺に非機能的細胞外液が貯留することは昨年度も確認されたが,MPの投与によりその貯留を有意に抑制することはできなかった。 2.下肢虚血再潅流モデルでの検討 腎動脈下で体幹を緊縛して下肢虚血として,3から6時間後に再潅流14C-Inulinを投与して,血中動態,臓器分布の解析とオートラジオグラムを行った。 (1)虚血後の再潅流により,虚血とした下肢筋肉,皮膚のみならず,肺,肝,膵,全身皮膚に著明な非機能的細胞外液の貯留を確認した。(2)再潅流1時間前にMPを投与することで全ての臓器での非機能的細胞外液貯留が大幅に減少した。(3)血中IL-8は虚血-再潅流により上昇するが,MPの投与により抑制されなかった。 3.膵炎モデルによる検討 セルレイン投与による急性膵炎モデルを作製した。このモデルでは他の臓器での非機能的細胞外液の増加が明らかでなかった。
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