研究概要 |
FISHによるヒト胃癌の悪性度評価および臨床への応用を目的として、胃生検標本59例の第1、7、11、17番染色体数的異常,およびDual-color FISH法によるsm胃癌切除例20例の第17番染色体とp53遺伝子の数的異常を同時に解析し、以下の結果を得た。 1.胃生検標本に対してFISH法が可能であり,第1、7、11、17番染色体解析では,胃癌近傍正常組織には,monosomyおよびpolysomyを示す細胞割合の増加は認めず,染色体の数的変化は認めなかった. 2.第1、7、11番染色体におけるmonosomy,および第1、7、11、17番染色体におけるpolysomyを示す細胞の割合は,正常組織と癌組織の間で有意な差を認め(p<0.0005〜p<0.005),これらの染色体の数的異常が癌の発生進展に関与している可能性が示唆された. 手術例31例と臨床病理学的因子との比較検討では,リンパ節移転およびリンパ管浸潤は第7番,11番,17番染色体のpolypoid症例に有意に多く認められ(p<0.005〜p<0.05),腹膜転移は第1番および11番染色体のaneuploid症例(各々p<0.01、p<0.05),静脈浸潤は第17番染色体のpolyploid症例に多く認められた(p<0.01).このことから特定染色体の数的異常が胃癌の浸潤進展に関与している可能性が示唆された. p53遺伝子の欠失を示す細胞の割合はsm胃癌でコントロールに比較し有意な増加を認めた(p<0.0005)。 さらにリンパ節転移陽性が陰性に比較し有意な増加を認めた(p<0.005).胃癌細胞のリンパ節転移にはp53欠失細胞の存在が深く関与している可能性が示唆された. 以上の結果から,胃生検組織を対象とした第17番染色体,p53遺伝子および他の遺伝子に対するFISH法解析をすることによる前癌病変の悪性度評価,術前でm、sm胃癌と診断された症例における悪性度判定,特にリンパ節転移の有無の術前判定へ臨床応用の可能性が示された。
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